素材を選ぶとき、無垢であること、をテーマに考えることがよくあります。なので木を使っているのに塗料で塗りつぶすことにためらいがあったりします。木は木のまま、タイルはタイルのまま、モルタルはモルタルのまま使いたい。おそらく多くの建築設計者はそのように考えているのではないでしょうか。しかし、無垢とだけ考えることは、実はデザインをサボっていることではないかと思うようになりました。
塗装には素材の表面を保護することで耐久性を上げたり、色味や光沢を与え外観を美しく見せるという役割があるのですが、例えば木や合板に施す塗料の種類、色や光沢によって素材の印象、延いては空間の印象が大きく異なってきます。モルタルの床も防塵塗装か撥水剤塗装かで上質的かカジュアルかなど、言葉はいろいろあると思いますが、感じ方が変わってくると思います。この空間のイメージと店舗であればお店のコンセプトやターゲット層、住宅であれば趣味や生活スタイルと合わせていくことで設計が進められます。また、塗装によって色味の微調整ができるため、他の部位との色のバランスを整えることができます。
無垢だけであれば各部分が居心地悪そうにバラバラにあったものが、塗装されることで素材の肌や木目などは生かされながらも、違和感なく全体とバランスをとることができる、塗装はそんな素材の幅を広げてくれるものだと思います。単に無垢というだけではない、塗装を考えることは無垢の先をいくことなのだと思います。
鎌松亮 ryokamamatsu