℗Photography by Akira Nakamura
賃貸住宅の最上階にある、夫婦2人と犬2匹の住宅。
小さな住宅ではあるが、2つのテラスと屋上に上ることができ、室内よりも屋上の方が広い。この屋上も生活空間に含めた、犬が走り回り、人が快適に暮らせる住宅が求められた。
周囲には中層の建物が多く、地域の中心的な寺院や緑豊かな公園が近い。テラスに出れば空を独り占めでき、ここでの生活が都市から遠く切り離され、空と豊かな関係を築く「はなれ」のように思えた。
都市と空の境界にあるこの場所では、いつどこにいても、常に空は隣にいてくれる。身近な空との距離感を慎重に調節した。
空にそっぽを向くように、生活の向きをつくっている。大きなキッチンカウンターは、テラスとは横向きに配置し、空を横目に食事をとる。テラス正面に投影壁を設け、空に背を向けて映画を観る。空から意識を逸らすことで、むしろ空が意識に残る。
一方で、室内は空からの光を受入れる。暑がりの犬が涼む廊下は、ひんやりとしたグレーのタイル敷とした。またキッチンは業務仕様のステンレスキッチン、グレーのシートでまとめている。色がなくなり、光が充満する。
窓のない個室は壁の上部を開け、天井に反射した光が朝の訪れを知らせてくれる。
都会の喧騒は遠く、空に包まれて安心して暮らす、上空のはなれ。