半間の接線 | note architects

半間の接線 nomura sanko .inc office

℗Photography by Kenta Hasegawa

懐かしい趣のある商店街近くに建つ、地元密着型の施工会社の事務所。
計画に当たり、地域に開かれていること、誰でも入りやすい雰囲気とすることなど、地域との何らかの関係を持った事務所が望まれた。

既存の賃貸併設住宅は、2階が半間だけ後退していた。また躯体を調査すると、廊下や押入れなどの半間幅に柱が並ぶスペースが、建物を貫通するように複数存在していることが分かった。この「半間の間」を、街とつながる「接線」として設定し、変化に富んだ街と多様な関係性を築けるように計画した。

半間の接線は、街との関係により自在に姿を変える。
道路と接していれば、縁側のような中間領域となる。近接している客席やギャラリーとは目線の高さが異なり、それぞれが気兼ねなく自由に過ごすことができる。執務スペースの奥では、半間のトップライトから光が取込まれ、半間の窓からは街を見通すことができる。そこだけ外部が入り込んだような環境では、off-timeな時間が流れる。半間の階段を上った先に空が見える体験は、建物が密集している都心においては特別に感じる。半間幅だけ増築されていた部分は解体し、生まれた庭を「半間の庭」と名付けた。

1階の客席と2階のコワーキングスペースの中央付近には、外部が貫通するように半間の間の両側に窓を設けた。仕事中でも、ふとしたときに街へと意識がながれていく。

私たちは昔から接線を引くことで、他者とのつながりを築いてきた。縁側やのれんなども、伝統的な接線の形といえる。機能的につくられた「半間の間」を解体し、自由度の高い「半間の接線」として再構築することで、他者との関係が生まれた。

建具を全開にして物理的に開いたり、カフェなどのプログラムを介した開き方もあるかもしれない。懐かしさの残るこの街では、散歩帰りの老人が、働く人とは無関係に縁側に腰かけているような、ただ接するだけの開き方がふさわしいと感じている。

2024.3.11 toolbox user’s reportで取上げていただきました。

type office
location Shinagawa-ku Tokyo
completion 2022.6
construction 野村産興株式会社
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